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2009年 08月 18日
◇8月下旬といえども炎暑甚しである。大不況の中では、採用計画も見通し不明、採用活動はしばらくお休みということで、ようやく筆者も読書の時間が取れることになった。そこで書店の新刊コーナーを覗いてみた。入口には、村上春樹の『1Q84』が山積みだが敬遠、佐野眞一や半藤一利の昭和史ものや、スカッとするためには北方謙三の『楊令伝』などもいいかなと思ったりする。
しかし、悲しい習性でつい人影のないビジネス書のコーナーに近寄ってしまう。春先のような世界経済大破局、日本経済自壊といった書籍は少なくなり、経済再生や次期政権がらみの本が目に付く。だが、それ以上に、思考力や脳を活かす方法、生き方といったテーマの本が売れているようだ。自分だけでもしっかり生き抜こうという知恵だ。 さて、肝心のビジネス書コーナーだが、目に付くのは、雇用問題をテーマとした本の多さだ。最近は、景気や企業業績の回復が期待されているが、雇用情勢となると、悲観論ばかり。新聞や雑誌では、秋には失業が10%を突破するとの見通しがほとんど。そこで雇用問題について少し勉強しようといくつかの本を買って、お勧め本を探ってみた。そのため本号は、「採用担当者読書ガイド(本年前半分)」とした。 ◇ビジネス書のなかで最も多いテーマは、雇用格差に焦点を当てたもの。代表的なものは、『なぜ雇用格差はなくならないのか』小林良暢(日本経済新聞出版社)である。小林氏は、非正社員の存在を認め、彼らの力を引き出し、活用しながら雇用格差をなくしていこうという立場だ。この格差解消の突破口は、年収300万円以下の賃金について100万円増やすことにあると論じている。すなわち、高賃金層の正社員の労働時間を短縮することによって、賃金を再配分するという大胆な提言である。長年、労働組合(電機労連)の役員をしていたが、建前にこだわらず、本音で解決策を語る内容である。読んで刺激を受ける本だった。 ◇雇用環境の全体を悲観的に論じたのは、『大失業時代』門倉貴史(祥伝社新書)である。リーマン破綻からの世界経済の変化や今後の見通しを多くの調査やマスコミ報道を紹介しながら論じている。気になる新卒者の採用環境については、かつての就職氷河期ほどには悪化しないとみている。その理由として、少子化の進展で新卒者の数が大幅に減っていること、過去の新卒者採用抑制で企業の年齢構成がいびつなものになってしまったことの2つをあげている。後者は、若年労働者の割合を高めて組織を強化するということでは理解できるが、前者の「新卒者の数が大幅に減」は、事実と違うのでは。若者の減少傾向の中で新卒者の数は、当面、横ばいだからだ。それよりさらに新卒採用が悪化しない根拠としてあげているのは、内定取り消し企業名の公表で抑制効果が出ているとの記述である。採用担当者からすれば、次元が違うのでは、といいたいところだ。しかし、本書の内容は、この間の世界の動きを手際よくまとめていて有益だ。なお、大失業とは、すべての労働者が、雇用不安におびえ、所得が低下する時代のことをいう。 ◇マクロ的に最近の雇用問題を根本から考えたいという人には、『新しい労働社会』濱口桂一郎(岩波新書)がある。派遣切り、雇い止め、均等待遇などの問題は、日本型雇用システムである職務の定めなき雇用契約に起因するとしている。濱口氏は、「雇用契約は、メンバーシップ契約である」という。どこまでメンバーシップが機能するか、正規、非正規の枠を超えた経営者、労働者による合意形成が重要だと論じている。いかにも岩波新書らしい平易だが、高邁な本で、途中で投げ出したくなる本だが、労働法制の問題点を知るのには、有益だった。 ◇新卒採用の方向について的確な分析と方向を示しているのは、『雇用再生』山田久(日本経済新聞出版社)である。山田氏は、新聞、雑誌でもしばしば登場する論客だが、最近の表面的な規制緩和批判を排し、規制改革推進を主張している。そのためには、幻想としての正社員中心システムを捨て、多様なタイプの人材の組み合わせである「人材ポートフォリオ」という視点から、今後のあるべき雇用システムを論じている。新卒採用については、景気停滞が予想されるので新卒採用が大きく抑えられ、若年層の正社員比率が低下し、非正規労働者になる若者が増えていくことが必至であると指摘する。卒業時の景気で正社員になれる可能性が大きく異なり、その後の人生が決まってしまうという学卒未就業問題は「新卒一斉採用」という日本特有の雇用慣行に原因があるとして、今後は、新卒一斉採用という慣行の見直し、非正規社員の正社員への登用を増やすべきだと主張している。真っ赤なカバーで並製の本書は、お手軽な告発書の印象を与えるが、読んでみると論理的で示唆に富む好著である。採用担当者として必読といえよう。 このほか数冊の本(『下流志向』内田樹、『日本の雇用』大久保幸夫など)を紹介したいが、紙面が尽きた。次回にレポートしよう。 [09.08.18]
by bcp_sjk
| 2009-08-18 09:42
| [メルマガ]採用戦略研究2009
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