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2005年 12月 31日
採用活動がスタートした。来年は「4月の集中化」と「長期化」という相矛盾した採用スケジュールが予想される。そうなれば、春休みも5月の連休も返上だ。
そこでまだ時間に余裕のある今のうちに京都の「私のしごと館」の見学はいかがだろうか。職業、しごと、キャリアをテーマとする人間としては、是非覗いておきたい施設だ。場所も京都なので、紅葉も楽しむことができ、一石二鳥だ。所在地は、京都府木津町。京都駅から近鉄奈良線の急行に乗って30分、新祝園駅で下車、バス7分でこの施設に到着する。この一帯は、関西文化学術研究都市といわれるところである(大阪・難波からは、50分)。時間だけを考えれば近いのかもしれないが、実際にはひどく遠い感じがする。この施設の3階から外を見ると遠くに若草山、東大寺が見える。ここは実際は、奈良なのである。この施設は、左右200メートルの3階建ての総ガラス張りの洒落た建物で、建坪は3.5万平方メートルある。どこか関西空港のデザインに似ている。外壁は、赤レンガ、庭は、芝生と大谷石の滝、噴水が見学者を圧倒する。 さて、肝心の中味である。設立の趣旨は、若年者の職業体験機会や職業情報の提供をめざすことという。強調しているのは「触れて、体験する」こと。そのため職業に関する展示、体験、700職種以上の職業紹介ビデオライブラリー、若年者に対する職業生活設計の支援やコンサルティング、若年者、学校教師、採用担当者向けのセミナー、プログラム、ツールの開発を行っている。 館内はどうだろうか。最初の「しごと探索ゾーン」では、自動車・食品メーカーや旅行代理店の職場さらにはトンネル工事、高圧線の架線作業を再現、事務機器をつかったり、映像を見せたりして仕事を具体的に理解する仕組みだ。ほとんどがパネルでの説明なので面白くもなんともない。次がこの施設のウリである「しごと体験ゾーン」である。清水焼、京友禅から栄養士、消防士、介護、宇宙開発など40種ある。人気があるのは、声優、美容師の体験という。女子中学生が群れている。次は、「しごと歴史・未来ゾーン」である。 江戸時代からの職場や職業(大工、商人、紡績工、セールスマン、客室乗務員)を人形で再現している。ここも金はかかっているが、まるでインパクトがない。このあと「じぶん発見ゾーン」にたどりつく。ここでは、オリエンテーリング方式で興味、関心から自分のタイプを判定し、「どのラビちゃん(ウサギ)に変身するのかな」というかたちで将来の仕事を小学生に示唆する。これを大人向けにしたのが「しごと情報ゾーン」である。職業興味、適性、行動特性などをコンピューターで自己分析するのだが、垢抜けない入力画面に向かって回答すると診断表がカタカタと出てくる。もっと詳しく職業や情報が欲しい人は、データベースを利用することもできるというが貧弱な情報である。かくして、見学時間は2時間を要した。 その感想は? 小中学生の総合学習には好適だが、高校生や大学生には物足りなさが残るだろう。この程度の職業情報や自己分析ツールは、どこの学校にでもあるからだ。「早期離職者」や「フリーター」なら、遠すぎることと威容を誇る外観から、入館すらしないだろう。どこを改善したらよいのだろうか。展示の構成は悪くない。だが、職業の種類が「ものづくり」に重点があり、今日の社会の実情や若者の興味を反映していない。さらにネット時代であり、国際化している時代なのに、まるでその分野の職業や仕事が取り上げられていない。展示だけでは、しごとの面白さや厳しさ、働く熱気が伝わらないのだ。いっそのこと六本木ヒルズの模型を作って、入居している企業(ゴールドマンサックス、楽天、ヤフー、ライブドア、グッドウィルなど)の事業内容、経営者のプロフィール、年収、社員の平均勤務時間などを示したほうが若者(中学生だって同じ)には、ピンとくるのではなかろうか。それに仕事の見せ方についても工夫が必要だ。箱物で説明しようという発想は安易である。ここ数年、企業が採用活動で行っている各種イベント、ワークショップ、説明会を少しでも研究すれば、はるかにコストも安く、説得力に富んだ「しごと」を表現できたはずだ。 この施設は、平成15年に開館した。施設の総工費は580億円、敷地面積は、なんと20万平方メートル、土地取得だけで150億円(こんな原野がどうして?)という。現在までのべ81万人が入館したというが、毎年の維持費は21億円、収入は1億円、毎年20億円の赤字である。事業主は、厚生労働省関係の雇用能力開発機構だ。職員数24名、ほかに業務委託、派遣、出向などで100人近く抱えている。もちろん、役所の無駄遣いの槍玉に挙げられている施設である。それもわれわれの雇用保険から出資されているのだ。「若年者の自立・挑戦」に本当に役立ってくれればよいが、残念ながら、建物だけに費用をかけ、職業の魅力というソフトウエアに情熱や金をかけることを忘れた施設なのである。 しかし、採用担当者としては、京都、大阪方面に行楽や出張したときにはぜひ見学・体験することをおすすめしたい。職業や仕事の魅力を伝えることの難しさを知ることができる。また設備だけでは限界があり、職員の情熱と工夫がなくてはできないことも知るはずである。ここの見学をして、しみじみ、採用担当者がいかに企業や仕事について創意と工夫をしているかということに自信を持つ。それだけでも収穫である。余談ではあるが、この立派な施設については今後、残るかどうか疑わしい。かつてスパウザ小田原が455億で建設したものの8億円で売却されたことと同じ運命をたどることのないことを祈りたい。 [05.11.01]
by bcp_sjk
| 2005-12-31 20:00
| [メルマガ]採用戦略研究2005
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